GOHAN Leaders対談/「うさぎ屋udon」小川洋子さん×「手打ちうどん どん太」佐藤由樹子さん/Vol.4
画像をクリックすると、「うさぎ屋udon」が掲載されている情報誌を読めます。たまきたPAPER2023春号のP.4です。
画像をクリックすると、「手打ちうどん どん太」が掲載されている情報誌を読めます。たまきたPAPER2023秋号のP.6です。
原田あやめ(『Minnaごはん』編集長・調理師・保育士、以下「原田」) シルバー人材派遣のような形で、働きたい障害者と企業のマッチングサービスをするなら、どういうサービス名がいいんでしょうね。障害者の○○、みたいな形でうたわれると、本人や家族としては登録しにくいものでしょうか。
佐藤由樹子さん(「手打ちうどん どん太」店主・以下「佐 藤」) 私は周りに子どもに発達障害があると言っているぐらいなので何ともないんですけど、隠したい親御さんもいますよね。呼び名って難しいですよね。分かりにくかったら、参加したいと思っても何かわからないですし。
原田 小川さんは製麵機を使われていますが、その後の調整とかも忙しいですか?
小川洋子さん(「うさぎ屋udon」店主・以下「小 川」) 例えばLGBTとか言われていますけど、昔はオカマとかゲイとか言われてたけど、今だとマイノリティーが、とかおしゃれな言い方があるじゃないですか。そんな感じの言い方があるといいですよね。発達のマイノリティーが、みたいな(笑)。
佐藤 その辺英語にして欲しいですね(笑)。
原田 考えよう! それができたら一大センセーショナル。
小 川 性的志向の方はLGBTって言いますけど、発達障害系の何とかってないんですかね。差別禁止のそういうね。ADHDとか。
佐 藤 ASDとか
原田 スペクトラムとか言いますね。
小 川 いっぱい発達障害の言葉があって、頭文字を取っていい言葉になったら。
佐 藤 ハンディキャップとか、そういう風に言われるじゃないですか。それもちょっとマイナス思考なイメージっていうか。ハンデって、まあハンデなんですけど、それをプラスに受け取れる言葉が欲しいですよね。
小 川 やっぱりスペシャリストっていう感じに持っていくといいですよね。それ以外はゼロですみたいな(笑)。
原田 ギフテッドとか言いますけど、そこまで言わなくても、すごく何かが得意だけど、ほかの事は全然ダメ、でも仕方なくやってるっていう人、よくいますよね。
小 川 家事が苦手な人に家事やってもらうみたいなね。
佐 藤 お皿洗うのがめっちゃ好きな子とかいてるしね。店でお皿2時間だけ洗ってるとか、めっちゃ助かりますけどね。
原田 平均的に国語算数理科社会ができる人が国立に行けて、平均的にそこをみんな目指して、苦手な事もそこそこはできるようになってこそ1人前…が立派だとされているがゆえに、みんな苦しんでるような気がして。何かに特化して2時間だけとか働いて暮らしていけるのって、発達障害の人だけじゃなくて加わりたい人はたくさんいますよね。
小 川 大なり小なりですよね、みんな。
佐 藤 それで回ればみんな嬉しいですよね。
小 川 いろいろな企業が同じ視点になってくれるといいんですよね。
佐藤 そしたらきっと、自殺する人とか心が病んでとかいうのも減ると思うんですけどね。
原田 ただ、今の会社の形だと、そういう人達にお願いしにくいところがあるのかもしれないなと思って。逆にこういうふうにしてあげたら効率よく、そういう人に働いてもらえるよっていうノウハウをお母さん達から企業に提供してもらえるといいですよね。それをやってみたら、「今までより効率が良くなった」とか。
佐 藤 この子、封筒に手紙を入れるのがめっちゃ得意ですみたいな。その子の売りみたいなのをわかりやすくしてってしたらいいですよね。
原田 お仕事リストができるといいですよね。この仕事はこういう人にやってもらったらいいみたいなマッチング、今ないんですか? そういう方向けの。
小 川 東京都でやっているのがあるらしいんですけど、ソーシャルファームって知ってます?
原田 知らないです。
小 川 自立的な経済活動を行いながら就労に困難を抱える方が必要なサポートを受けて、他の従業員と共に働いている社会的企業のこと、だそうです。もっと広くマッチングアプリみたいにできるといいですよね。
原田 Timeeってあるじゃないですか。あんな感じでできるんですよね、制度的には。この時間だけ来て、という募集が。
小 川 そうそう。試験的に働いてもらって、お互いに合うなら正規雇用でもいいし。親御さんからしたら「これはできます」と言っても、実際やってみると環境が違うからいつもできることができないとか難しい面もあります。そういう部分はどう改善したらいいでしょうかというのを話し合えるといいですね。その子がちゃんとそこで落ち着いて仕事ができるまでサポートの人が入るとか。話し掛けても言葉で入ってこない子が多いので。その辺がプロの人がいるじゃないですか、この子にはこういう伝え方が適性ですよとか。それまで発達障害の子に接してこなかった人達だと、「やっぱりダメだね話が通じないね」ってなっちゃうので。最初のマッチングの時のサポートですよね。それをしっかりやってくれないと難しいですね。
原田 そこができればすごい戦力として働いてもらえるかもしれない。仕組みなんですかね。
小 川 何時までにこれやってねってぱっと言ってもだいたい聞いてないんですよ。だから紙に時計を書いて、ここからここまでが作業ですよとか。赤ボタンが押すところですよとか、全部色で分けるとかじゃないと。文字で「押す」とか書いてあってもピンと来てなかったり。
原田 それって人によって違うわけで。
小 川 色が得意な子と映像が得意な子がいるし。
原田 個別な対応っていうのは結構ハードル高いですね。
小 川 ポンと「この子配属します」って丸投げされちゃっても、どう扱えばいいかが分からないので、そこは一番理解している親御さんと協力関係ができるといいですよね。
佐 藤 全企業にそうしてほしいとは言わないんですけど、その辺を分かってくれる、働けるネットワークを作ってもらえると、私の子どもぐらいの発達障害を持つお母さん達もこれから安心ですよね。
原田 何か、社会や地域でこういうサービスがあったらいいのにとか、あります?
小 川 この辺だとまだ畑がたくさん残ってるじゃないですか。私は飲食店をやっているので、店で使っているようなネギ、ナス、大根なんかをそういう畑で作らせてもらえたらいいんですけどね。土いじりが得意な子達にそこに入ってもらって、高齢で農業はできないけど畑を持っている方達に指導してもらいながら。放置状態の農地や空き家なんかも、もっと活用して人材をそこにあてがって。
たぶん障害持っている子のお母さんの心配は、働く事もそうなんですけど、自分が死んだ後に生きて住む場所もなんです。持ち家を子どもにあげると言っても、それも心配ですよね。電気代払えるのかとか。
結局その子達をサポートできるホームみたいなものが必要で、空き家がいっぱいあるんだったら、その辺を活用してほしいですよね。
佐 藤 壊すのにもお金掛かるし、更地にするのにもまたお金掛かるし、となったらもうそのまま朽ち果てるのを待つみたいなこと、よく聞きますよね。農業なら、発達障害の子達は「面倒くさい」みたいなのがあんまりないから、決められたことを淡々とやる子が多いですよ。「あーこれ面倒くさい、省こう」とかいうことは、絶対考えへんから。
小 川 「虫を取って」って言ったら1日中虫を取る(笑)。
佐 藤 今日はそれをする仕事だって思ってやると思うから。そういうのはできると思う。
原田 減農薬とか無農薬で育てた野菜って高く売れるじゃないですか。それが収入になったらいいですよね。
佐 藤 あの子たちで、生産ラインができますよ。種まきのプロフェッショナルみたいな子とか、袋詰めだって、淡々とする作業やから。サイズ計って入れてとか。
小 川 やってみたいですね。私は障害者どうのこうのじゃなくて本当に農業やりたくて。ただ、野菜を育てたことがないので、プロの方に指導してもらえると助かります。
佐 藤 自分が畑に毎日出るのは無理だけど、要所、要所で見に来てくれたりポイントを教えてくれたり。
小 川 農業に後継者がいなくて農業をやめるなら、是非うちの子達使ってくださいって。できると思うんですよね。
原田 そういう意味でいくと農業っていうのは、発達障害を持つ人達にとっていろいろな可能性のあるカテゴリー。そしたらその野菜をお二人のお店で使えますね。そういう農業のトライを気軽にやれるといいですよね。
(完)
発達障害を持つお子さんを育てながら、うどんのお店を営む二人のママの対談をお届けしました。「食と社会」についてリアルな声を聞く対談、今後とも企画していきます!