G-8DB0TDY6KN GOHAN Leaders対談/「うさぎ屋udon」小川洋子さん×「手打ちうどん どん太」佐藤由樹子さん/Vol.3|Minnaごはん
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GOHAN Leaders対談/「うさぎ屋udon」小川洋子さん×「手打ちうどん どん太」佐藤由樹子さん/Vol.3

木下あまね

食事に向き合って素材や作り方を研究する人たちに、ごはんストーリーやレシピをお伺いするインタビュー企画「ごはんリーダーズ」。

今回は、埼玉県や東京都の多摩地方で昔から食べられてきた、「武蔵野うどん」のお店を営む女性二人に対談していただきます。

お二人とも地域情報誌『たまきたPAPER』の「武蔵野うどん探訪記」という連載で取材をさせていただいたお店のオーナー。発達障害を持つ子どものお母さんという共通点があり、ごはんと発達障害というテーマでお話ししていただきました。今回は連載3回目です。Vol.1 Vol.2もご覧ください。

小川洋子さん(左) 

東京出身・東京都在住。19歳の女の子のママ。PCオペレーター職を経て結婚、出産。退職後、東大和市で「うさぎ屋udon」を開店。 

うさぎ屋udon

佐藤由樹子さん(右)

大阪府出身・東京都在住。10歳・6歳の子どものママ。美容職、マッサージ店経営を経て、「手打ちうどん どん太」を開店。

@donta_staff

画像をクリックすると、「うさぎ屋udon」が掲載されている情報誌を読めます。たまきたPAPER2023春号のP.4です。

画像をクリックすると、「手打ちうどん どん太」が掲載されている情報誌を読めます。たまきたPAPER2023秋号のP.6です。

対談スタート

GOHAN Leaders

原田あやめ(『Minnaごはん』編集長・調理師・保育士、以下原田 小川さんは以前就業支援施設で働いていて、発達障害のある人の仕事にうどんづくりが合っているんじゃないかということで、うどんのお店をつくられたんですよね。

小川洋子さん(「うさぎ屋udon」店主・以下小 川 はい。粉と水を決まったとおりに計量するような作業は発達障害がある人が得意だと思ったんです。今、娘は朝お店に来て、仕込みを手伝ってくれています。今後は製麵所を作って、障害者雇用をしたいと思っていて。今、私が使っている製麵機は工程が手打ちに近いのですが、もっとオートマチックで大きな製麵機を入れると、もっと「決まったとおりに量る、操作する」という作業で製麺ができるんじゃないかと。

原田 佐藤さんはたまたまお友達からうどん店受け継いだということですが、食物関係の学校に行かれていたんですよね。夫も発達障害と栄養のことを調べて、お店で使う素材も体にいいものをより意識するようになったとか。

佐藤さんのお店「どん太」には季節の野菜を使ったマリネも登場する。
どん太の「カラダ定食」はサラダや手作りのお惣菜もセットでいただける。

佐藤由樹子さん「手打ちうどん どん太」店主・以下佐 藤 そうですね。夫が発達障害と栄養素とか、その栄養素を摂ったら脳のここが活発に動くとか、発達障害の子はこのへんの脳が使えてないから、周りとコミュニケーションがしにくいんだとか調べてくれて。

原田 栄養素というと、「こういうのを食べると発達障害にいい」みたいなことなんですか?

佐 藤 プロテインやサプリメントはこういうのがいいとか、こういうのを食べるのがいいってだーっと言われたんですけど、全部実行できるはずないじゃないですか。ほとんど忘れました(笑)。

原田 じゃあ、今は発達障害とごはんみたいなことはあまり意識していないんですね。

佐 藤 今はそうですね。

原田 上のお子さんが、ASDとADHDでしたよね。

佐 藤 はい。

原田 小川さんの娘さんは。

小 川 うちは最初、広汎性発達障害って言われていて。「ここだ」というよりもなんとなくいろいろな事が苦手で、「自閉症ですね」という感じなんですけど。

原田 発達障害は、昔といろいろ呼び方や分類が変わってきていますよね。

小 川 そうですね。同じ自閉症でも人によって全然違いますし。だから、もう私は「個性」で片づけちゃってますね。私も佐藤さんと同じように一時期、栄養とか食べ物とかを調べてこだわっていたんですけど。私の中で完結したのが、「人はいろいろな体に良くないものを何十年も摂り続けていて、私の中にもそれが蓄積されていて。それが出た子と出なかった子だけの違いじゃないかなと。蓄積されるとよくない添加物でも、100%取り除くのは無理ですから、今は「なるべく摂らない」というぐらいの感覚ですかね。

佐 藤 やりすぎたらキリがないですもんね。

小 川 逆に精神が(笑)。

佐 藤 そうそう精神的におかしくなる(笑)。

原田 商売だったら、ある程度の量を作らないといけないのに、素材にこだわるのは経営的にも難しいですよね。

佐 藤 そうですね、でも、そもそもうどんって、あまり添加物を使わないんですよ。

小 川 塩と水だけ。多少場所によってはグルテンを使ったりタピオカでモチモチ感を出すというのはありますけど、すごい悪いものではないので。中にはグルテンフリーじゃないといやだみたいな人もいますけどね。

原田 そうか、アレルギーとか。

小 川 日本人が小麦というかグルテンが合わないとか言われていますけどね。今はグルテンフリーは無理ですね。

佐 藤 日本人の腸の長さだとグルテンはあまりよくない、欧米の人が向いているとか夫が言ってましたけどね。

原田 小麦粉からグルテンを取って食事にというのは無理がありますね。「Minnaごはん」って、若い人たちにもおいしく体にいいものを食べる方法を伝えようというテーマもあるんですけど、あまり「添加物ダメ」って言いすぎないようにしたいんです。いろいろあるけど、まずは「食べなさい」じゃないですか。買ってきたものでも工夫しておいしく食べて、とにかく食に興味を持ってもらえたらいいなと。お二人のお子さんは、食べることには問題ないですか?

小 川 子どものころは「これしか食べない」というので苦労しました。

佐 藤 うちは、小さいころは食が細くて。発達障害の子どもは、落ち着く薬を飲む子が多いんですけど、使いはじめると余計に食が細くなる子がいるという話を聞いたので全く薬を使わなかったんです。一時はしめじばかり食べるというのもありましたね。今は全く食べないんですけど。

小 川 うちの子も落ち着きがなくて、睡眠障害なのかな。普通の保育園の子だとお昼寝して夜も寝ますけど、うちの子はまずお昼寝ができなくて。夜も結構興奮していて、ちょこっと寝ればそれでいいみたいな。私たちの感覚だと子どもって睡眠をたくさん取らないといけないと思うんですけど、どうも彼女にとってはその睡眠で十分で、普通に発達もしてるし大きくなってるし、健康だし。それを無理やり寝ろと言っても駄目だし。落ち着かせる薬を飲んだこともあるんですけど、時娘が「自分の体じゃなくなってる」って言ったんです。それが彼女の感覚で、落ち着く薬を飲むと思ったように手が出せない、動かせない、こんなの飲みたくないって。それで飲ませなくなりましたね。

ただ頓服という形で、今でもカッと興奮してしまうことがあるので、そういう時は「自分で飲みな」って。今自分で興奮してるなと感じているときに自分で飲むと、飲んでいることによって落ち着くみたいなので、気休めで弱い薬は出してもらっています。

原田 自分でコントロールしているんですね。いつから自分でできるようになったんですか?

小 川 高校に入ってからぐらいですかね。ほとんど学校にも行けなかったので別に家にいるだけだったので、生活のリズムをコントロールする必要もなかったので。

佐 藤 自分でコントロールできるなんて、すごいですね。うちも将来そうなるのかな。まだ、ちょっとした所で振り切れちゃって、ばーっと言葉に出ちゃうとか。

原田 一番の困り感って感情の部分なんですか。

佐 藤 そうですね。感情を抑えたいけど抑えられなくて、周りもどうしようもなくて落ち着くまで時間がたつのを待つだけっていう。ちょっとしたきっかけで止まらなくなるんですよね。まず冗談を受け取れないんですよ。友達と遊んでいて、冗談でちゃかされたりしていても、うちの子からしたら本気なんですよね。

原田 裏があるとかは。

佐 藤 そういうことは考えられなくて。うちの子は男やし、手が出ちゃうときもあったり。言葉がすぐ出てこない分、手が先に出ちゃうみたいな。

原田 その境界線って難しいですね。

佐 藤 周りの子を見ていても、うちの子は明らかに違うんですよ。小さいころから、呼んでも来ない、聞こえてない、自分しか見えてないから、道路も勝手に渡っていくみたいな。先生がみんなに対して言っていることは、自分には言われていないと思って聞いていないとか。補助の先生がいないと保育園もやっていけなかったです。

原田 そういう明らかな発達障害のお子さんが過ごしやすい社会って、そうではない人にとっても過ごしやすい社会なのかなと思っているんです。みんな個性があって、健常者だったとしても得意、不得意があるし完璧じゃないから、発達障害の子にとってわかりやすいものは健常者の人にとってもわかりやすい。だから分けないで、一緒に過ごしたほうがいいのかなと思ったりもするんです。仕事でも、発達障害の人がちゃんとお金をもらえる形で働ける場所が、社会一般に普通にあるといいなと。

小 川 福祉作業所だと、時給換算で100円ぐらいしかもらってないんですよ。1カ月の給料が2万円ぐらい。もちろん障害年金的なものも月何万かはあるんだけども、決して自立できるような金額ではないから、親が貯めておかなきゃとか、お家を用意しておかなきゃとかしておかなければ、自立できないんです。でも、作業所の子達を見ていると、この子はこれ得意だよね、この子はこっちが得意だよねというのがそれぞれにあって。でもそれだけじゃ生きていけない。それなら、その得意なことだけを仕事にできればいいんじゃないかなと思って。

作業所も1日いなきゃければいけなかったりするんですが、早く帰りたい子もいるじゃないですか。でも親の都合で「早く帰ってこられると困るから」みたいな感じでいさせられて、ダラダラいてキャーってなっちゃったりというのを目の当たりにしていたんです。みんな働きたいんですよ。褒められたいし。「すごいね」って言われるとすごく喜ぶし。

原田 働く意欲があって、仕事を楽しめるんですね。

小 川 作業所にお掃除が好きな子がいたんですけど、磨いてピカピカになることに喜びを見出すみたいな。逆にやりすぎというくらい(笑)。その子を1日1時間、お店で雇って「こことこことここピカピカにしといて」という契約をするとか、いいなと。東京都の最低賃金を払うから、1日1時間だけ集中して掃除してピッカピカにして、あとは作業所に行くなり何なりして、って。健常者ができないぐらいピッカピカにするんですから。絶対その子の価値だと思うんです。

原田 健常者ができないことができる、それも才能ですよね。

小 川 私はケーキとかクッキーを作る作業所にいたんですけど、きっちり計って、きっちり決まった時間をこねるというのを寸分違わずやる子がいたんですけど、その子にうどんを計ってこねてもらうのもいいなと。その子の特性にあったものを短時間でいいので毎日やってその分のお給料をあげて達成感みたいなものがあると、その子達の生き方も変わってくると思うんです。本当に戦力だと思うので。

佐 藤 何時から何時はこのお店とかね。

小 川 それが2~3店舗あれば、○時~○時はこのお店に行って、夕方はこのお店に行ってとかやるといいし。

佐 藤  Appleとかディズニーとかはそういう感じですよね。効率よく仕事をしている。

小 川 時間も何時に来てもいいみたいな。

佐 藤 夜の方がはかどるから夜行くとか、日本もそういうネットワークができたらいいですよね。健常の人が普通に働きたいなら普通の時間もあり、そういうのが苦手な子たち用にいつ行っても働ける場所とか、この会社は深夜に掃除して欲しいから深夜枠とか。もうちょっと発達障害の人に理解のあるお店とか企業がネットワークとして作ってくれたら周りも賛同しやすいですよね。

原田 商店街単位とかでみんなこの時間掃除して欲しい時間を集めて、この時間ここに2時間行ってきて、とか実験的にできたらいいですよね。みんなマルチにいろんなことが平均的にできるのが普通の人みたいな感じですけど、一生懸命を掃除きっちりやることが苦じゃないって人ってあまりいないじゃないですか。逆にありがたい労働力になる可能性があるんじゃないかな。

小 川 本当にそうで、健常者が手抜きしがちなところをそういう子達の仕事にしたらいい。

原田 障害のある子に「可哀想だから仕事あげよう」じゃなくて、プロフェッショナル集団という捉え方。人ができない事ができる。そういうWEBサイトを作る発達障害の人達のチームはあるんですよ。緻密なデザインとか緻密なシステムを間違いなく組めるっていう人達。そういうのが全国にあちこちシステム、そういう人が欲しいんだというのができていったらいいですよね。

佐 藤 そうですよね。売上データだけを間違わずに打ち込める人に、1日1時間それだけやって帰ってくださいとかね。

小 川 シルバー人材派遣に近い形もあり得ますよね。

(Vol.4に続く)

次回vol.4は、発達障害と仕事、さらに具体的なアイデアを話し合います!

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